新庁舎建設に関わる特別委員会の再設置を求める請願
請願の項目
新庁舎建設計画を慎重に審議するために新庁舎建設計画に関わる特別委員会を再設置し、市議会が基本計画以降の進捗に積極的に関わり、後世に悔いを残すことのない新庁舎建設を進めてください。
陳述書 2023.3.7 総務常任委員会
市民自治あかし 松本誠
市役所の本庁舎は、自治体にとっても市民にとっても「まちのシンボル」でもあり、自治体が建設する公共施設の中で最も重要な施設です。とりわけ、自治基本条例で「市民自治のまちづくり」を定め、それを推進する市政運営の拠点でもある市役所本庁舎は、明石市の最重要施設と言っても過言ではありません。
私たちは当市議会が「まちづくり推進特別委員会」で本庁舎の建て替えについて審議を始められた2016年から、新庁舎建設計画のプロセスに審議会などの市民参画手続きを取り入れるように繰り返し要望してきました。その後、本計画にはついに審議会等が設置されないまま基本構想から基本計画の決定に進み、いま基本設計素案の修正版が議会に報告されようとしています。
この間、市は「市議会の特別委員会とキャッチボールしながら議会を通じて市民意見も反映している」としてきましたが、その市議会の新庁舎整備特別委員会は一昨年2021年5月に突然廃止されてしまいました。特別委員会があるときは少なくとも、年4回開かれる定例会の際には進捗状況が報告され、審議されてきました。しかし、特別委員会の廃止後は総務常任委員会が所管される仕組みになっているものの、当初は総務常任委員会が開かれても報告さえなく、新庁舎計画は「まるでブラックボックスに入ってしまった」とも言える状況が続きました。
その後はさすがに毎回報告議案として上がるようにはなりましたが、「報告議案」は委員会審議の最後の議題になり、時間をかけた審議が行われにくいため、議員の中からも「十分審議することができない」という不満も少なからずの議員の皆さんから聞かれるほど、審議の時間も質も不十分なまま今日に至っています。
私たちには、なぜ特別委員会が2021年5月の時点で廃止されたのか、正確な理由は知る由もありませんが、漏れ聞くところによると「特別委員会は新庁舎の建設位置を決めることが大きな任務だった。建設位置については2019年10月の現在地建て替え決議や基本設計の委託業者からの素案の提案などで、その任務は終えた」と伺っています。
新庁舎建設計画の経緯を振り返ると、2019年秋までは4つも5つも候補地が出ていた「建設位置の選定」に関わる議論が中心で、この間は「向こう50年間の市役所業務のあり方の変化と庁舎機能のあり方」や「議会を含む庁舎施設の市民に開かれたあり方」などについての学識者など専門家や市民の意見を議論する場すらありませんでした。「現在位置での早期建設」を求める議会決議が行われると、その直後に「基本計画素案」(2019年12月)が報告され、基本設計と実施設計が委託されました。基本計画から大きく変更された基本設計素案については、議会のフロアー計画をはじめ次々に大きな変更意見が相次ぎ、コロナ禍もあって十分審議される機会もないまま今日に至っています。
議論の詰めが不十分な点について幾つか事例を挙げると、業務機能面ではデジタル化や市民センター等の出先機関との機能分担に関わる問題、建築面では今日の公共施設建設で最重視されるべき「省エネ、エネルギー自給庁舎」等への構造、設計上の配慮、災害時の緊急避難場所や庁舎機能の検討、市民利用施設のあり方や開かれた議会庁舎のあり方―等々があります。また、本庁舎周辺に広大な敷地が生まれる市役所ゾーン全体の構想も素案すらできていません。本庁舎だけ建て替えればいいというのではなく、明石海峡に面した一等地でもある「シティホールエリア」の全体構想は、新庁舎計画にとって重要な要素だと思われます。
現在の計画では、2025年度に着工しても、竣工までまだ5年もかかる計画です。この間にはまだ、これから詰めていくべき課題も数多くあります。明石市役所にとって今世紀最大の事業でもある新庁舎建設計画の遂行に、市議会が常にチェック機能を果たす仕組みがないのは市政運営の仕組みとしても、市議会の機能としてもよろしくありません。
名称はともかく、新庁舎整備特別委員会を再度発足させて、市民の意向をしっかりと汲み上げて、完成するまで建設計画に詳細にわたってチェックしていくようにしてください。
この1月に開かれた基本設計素案修正版についての市民説明会では、新庁舎建設に際しての国の財政支援措置(交付税措置)は「基本計画を決定し、基本設計と実施設計の委託契約を締結した時点で財政支援措置の適用はクリアしており、工事の着工時期は支援措置の要件にはなっていない」と市は明言しました。実施設計の期間を延ばすと、設計委託費の繰り延べ期限を超えるという問題があるということでしたが、これは市の予算を組み直して設計期間の延長措置を取ればできる話ではないでしょうか?
要は、150億円にも上る一大公共事業である新庁舎の建設は、何かに追われて「見切り発車」のような形で着工するのではなく、疑問点は残すことなく検討を重ねて、後顧に憂いを残さないように進めることが肝要かと思います。
一度建て替えれば、50年は使わなくてはならない庁舎建設です。市議会がしっかりとチェック機能を果たせる体制をつくっていただきますよう、重ねてお願い申し上げます。
以上