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声 明

「市民自治のまちづくり」推進の原点に立ち戻ろう
住民投票条例 3度目の否決に際して(声明)
市民自治あかし

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 明石市の住民投票条例制定議案が9月29日の市議会本会議で、3度目の否決に終わった。住民投票に否定的な議会の多数派におもねり、条例検討委員会が答申した内容を無視して提案された3度目の提案は、3名が賛成しただけで否決。答申通りの内容に修正した修正案も3議員から提案されたが、これも5名の賛成で、否決された。
 明石市で、市民が一定の署名を添えて請求すれば市長が議会の議決を経ることなく住民投票を実施する「常設型の住民投票条例」を制定することが定められたのは、2010年4月に施行された自治基本条例に明文化されたからである。市民参画と協働の仕組みを定めた第3章の14条で「将来にわたって明石市に重大な影響を及ぼすと考えられる事項について、住民が市長に対して住民投票の実施を請求したときは、市長は住民投票を実施しなければならない」と定め、発議要件や請求手続き、投票に付すべき事項、投票の資格要件や手続きなどを別途条例で定めるとされている。
 条例の策定にあたって市と議会は、条例案を検討する市民参加の検討委員会を諮問機関としては異例の条例で設置し、議会も認めた条例検討委員会が1年半、11回にわたる審議を経て2014年9月に答申した。市はただちに答申通りの内容を盛り込んだ条例案をつくり発表したが、在住外国人に投票権を与えることに反対する当時のヘイトグループなどからの抗議が相次いだことから、その年の提案を見合わせた。1年後、市はあらためて答申通りの条例案を作成しパブリックコメントに付した。市の案に対する意見の中で「署名数要件8分の1」について異論は1件もなく、大半は答申通りの条例に賛同する意見だったため、12月議会(2015年)に提案する準備を進めた。

「答申」軽視から始まった条例制定の迷走と右往左往

 ところがこの後から、突然迷走が始まった。議会への提出直前に最も重要な「署名数要件」が「6分の1」に改ざんされて議会に提出された。提案後「答申のままでは議会の反対で通らない」と議会多数派の意向に沿ったものであることが判明したが、市が配慮した議会多数派も「在住外国人への投票権付与」に反対する会派や「6分の1でもハードルが低い」「署名に印鑑不要は責任感が乏しくなる」などの理由から反対し、他方、答申に反した改ざんを批判する会派や議員も反対して“呉越同舟”する形の「全会一致」で否決された。
 市は「当分再提案しない」としていたが、2020年3月議会に再提案することを前年年末の12月議会閉会の挨拶で市長が突然表明し、その後内容について事前の説明もなく昨年3月議会に提案された。今度は署名数の要件など重要項目は答申通りに戻したが、在住外国人の投票権を外したことから、署名数要件に反対する自民党真誠会と公明党の反対で否決された。
 3度目の今回は前触れもなく9月議会に突然提出された。国の「押印廃止」に合わせたタイミングとされたが、答申と異なる署名数要件や在住外国人を外して議会で通ることを優先し「自治基本条例施行後10年を超える“違憲状態”を放置できない」(泉市長)とした。最大会派の自民党真誠会は「選挙で選ばれた議員が居るのに、住民投票条例は議会の責任放棄になる」と条例そのものが不要とエスカレートし、公明党は在住外国人を外したことに異を唱えて反対し、答申通りの条例を求める議員とともに再び圧倒的多数で否決された。

究極の市民参画制度が“漂流”を続ける根本原因は何か

 こうした経緯を振り返ると、議会の対応に右往左往して「条例さえつくればいい」という姿勢が露骨に見える市長と、そもそも住民投票条例不要論を根強く抱く最大会派の自民党系会派の間で漂流している構図が見えてくる。
 自民党真誠会が主張するように「自治体は間接民主主義だから、選挙で選ばれた議会に任せておけばいい」という乱暴な主張に、市長が迎合するのかどうかが問われる。「市民自治によるまちづくりの推進」を謳う自治基本条例の原点に、いま一度立ち返って、市民自治のまちづくりを推進するのかどうか、市長も市職員も議員も市民も見つめ直すときであろう。
 3度にわたる住民投票条例の否決は、ここ数年、市政運営の原則であるはずの「市民の行政への参画」が軽視されていることや「協働のまちづくり」も「情報の共有」もないがしろにされていることと無縁ではあるまい。この9月議会で市長肝いりの重要議案が3件も否決された背景には「市民参画」や「情報の共有」など自治基本条例に定められた市政運営の原則が軽視され、ご都合主義的に運営されていることも議会審議の中で明らかになった。
 自治基本条例の遵守は市長も議員も職員も、等しく義務付けられている責務であることを忘れているのではないか。住民投票条例の制定が7年間も漂流しているのは、日常的な市政運営と議会運営の誤りから起因していることを想起すべきである。
 議会の中で相対立する意見が存在するのは当たり前で、多様な意見を「議員間の討議」によって限りなく合意を形成する議論を深めるのが本来の議会の任務であり、明石市の議会基本条例にも明記している。にもかかわらず、議会基本条例制定以来いまも「議員間討議はしない」という“申し合わせ”のもとに会派や議員の主張を述べるだけで、議員間の討議を避けてひたすら「数」だけで物事を決定している。住民投票条例の検討委員会が当初は委員間で大きな意見の隔たりはあったが、長い時間をかけて委員同士で議論を重ねて合意形成に努力をしたうえで、答申をまとめ挙げたのと大違いだ。議員間で意見の相違を討議によって縮めていく努力をしなければ、いつまで経っても多様な意見を一つにまとめる議会の役割を果たせない。
 今回の審議過程で本会議では、泉市長はこの件についての答弁を一手に引き受けて「自分は答申通りの条例に賛成だが、議会で議論を重ねて結論を出して欲しい」と促した。しかし、議員からは「無責任な発言だ」という批判が強い。条例制定の責務は議会とともに市長も負っているのだから、委員会の審議に市長も出て、合意形成へ向けて丁々発止の討議を行うべきだった。
 こうした展開についても議会は「市長の反問権」を封じ、議員間討議の“封印”と同様に、議会と市長との討議も“封印”している。3回にわたる否決の繰り返しは、異なる意見があるからではなく、多様な意見を合意形成していく「討議民主主義」が欠如していることに根本的な原因がある。

「討議民主主義」の回復と、市政運営の原則を遵守する市政と議会へ

 私たちは、自治基本条例に即した住民投票条例の早期制定を願うが、市民が使いにくい形だけの条例は要らない。「究極の市民参画」手段である住民投票条例が市民にとって使いやすいツールになる条例制定とともに、日常的な市民参画行政の遵守をより強く求める。未だに住民投票条例が制定されていない“違憲状態”は、条例制定だけでなく市政のあらゆる現場で「市政運営の3つの原則」がないがしろにされていることも、ゆゆしい“違憲状態”である。
 住民投票条例が宙に浮いていることだけに目を向けずに、日常の市政運営と議会運営が自治基本条例や議会基本条例を遵守していないことに目を向けるべきである。
 私たち市民は、そうした目線から、これからも市政と議会を見つめていきます。

2021年10月1日
政策提言市民団体 市民自治あかし
事務局:明石市太寺4-9-17