住民投票条例制定を求める直接請求
 請求代表者の陳述 2012年11月20日

明石市議会 11月臨時会 請求代表者の陳述 松本誠

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松本誠です。本日はこのような形で「陳述」の機会をいただき、ありがとうございます。

明石駅前再開発計画に関して住民投票を行うよう求めた住民投票条例の制定を直接請求させていただきました2万196名の市民と共同請求代表者を代表して、直接請求した理由とその意義、明石市としての対応のあり方について陳述いたします。

本件は、明石駅前南地区の再開発計画の賛否を問うための住民投票を実施するよう求めるものです。

同再開発計画は、すでに先月末、再開発組合の設立を前倒しでおこない、既成事実が次々に重ねられています。しかしながら、この計画には今もなお、市民の反対と疑問の声が根強くあります。臨時市議会に先だって先週までおこなわれた5回にわたる議会報告会でも、再開発計画への批判的意見が圧倒的に多かったことが、何よりの証拠です。昨年秋に泉市長が28の小学校区でおこなった市長懇談会でも、再開発計画の問題に批判の声が集中しました。

◇再開発計画に対する市民の反対と疑問点

再開発計画に対する市民の反対と疑問点は、大きく分けて次の4つです。

第一は、民間事業でありながら、巨額の税金を投入しなければならない公共事業としたものの、その成果について確たる見通しを示さず、財政面への影響が明らかにされていないことです。先行した唯一の再開発事業である「アスピア明石」の失敗と同じく、巨額の税金がドブに捨てられることになりかねない懸念が強いことです。

今日では、巨額の公共事業をおこなう際には、その事業の社会的公益性や、その事業による効果が具体的に見えるように説明され、しかも事業費総額が財政上の支障を生じないかという検証が不可欠です。この点については以下に述べるように、明らかにされていないことが余りにも多く、市議会での追及と審議も不十分で、財政への影響が十分検討されていません。

例えば、市の負担額です。公表されている266億円の再開発事業費のうち市が負担する98億円は、補助金や1万1000㎡の保留床の買い取り費用に過ぎません。再開発ビルにおける保留床買い取り費用はコンクリート打ちっぱなしのいわゆるスケルトンでの買い取り価格であり、これに内装費、設備費、什器備品等の仕上げに要する費用がかかります。また、市の単独事業になる駅前広場の整備や2号線の歩行者デッキ等の費用は一部しか計上されておらず、これらを含めた初期投資の総額が隠されたままです。

さらに、駅前再開発ビルでは、通常、家賃に匹敵するぐらいの共益費や管理費の負担が生じるというのは常識です。中小零細事業者が再開発ビルに入れなかったり、いったんは入居してもほどなく撤退せざるを得ないのは全国の再開発ビルに共通しています。ことほど左様に負担の大きいランニングコストが将来にわたってどの程度発生するのかという数字も見通しすら明らかにされていません。

いわば、市議会は巨額の公共事業について、総事業費の全体像をつかまないまま、この計画を推進し、予算を断片的に認めているわけです。議会の審議では何人もの議員が市に説明を求めていますが、市が明らかにしないまま、多数決でなし崩し的に事業費が認められてきました。明石市の行財政運営がまさか、全体事業費も分からないまま事業を進めることはあり得ないことです。都合がわるい数字を市議会にも隠したまま、そのことが問題にされず、議会のチェック機能が利かない状態で事業が進められるという異常な展開になっています。

疑問点の第二は、「中心市街地の活性化と商業に賑わいを取り戻す」ことを目的に挙げながら、そのような効果を生み出すことにつながらない計画であることです。市議会では、目的と計画がつながらない矛盾を議会で追及しないまま、多数決で事業を推進しておられます。再開発を推進する方々は、この事業が巨額の税金の投入に見合う投資効果が期待されると、本気で考えられておられるのでしょうか?

公共事業に対する税金の支出は、投資事業の評価において、費用に対する便益の比率、いわゆる「B/C」比率が重視されます。市が県に提出した明石駅前再開発事業におけるB/Cは1.20です。いわば、ぎりぎりのプラス評価です。

ところが、その根拠には、向こう47年間、施設のすべてが賃貸される利益や敷地の地価上昇が続くこと、半径10㎞の範囲で宅地価格が47年間上昇するという前提条件のもとに「期待できる利益」を算出しています。これらの前提が現実離れしたものであることは議論の余地はなく、まっとうに計算すればB/Cはマイナスになり、事業は認められないのは明らかです。

ここまでしなければ、経済的事業効果の説明をできないというのが、この計画ですが、資料は市から議員にも配られていますが、問題点を突っ込んだ形跡は見られません。

また、再開発ビルへの大型商業施設の誘致が困難な状況下で、核施設に公共施設を持ってくる手法は最近の流行りです。しかし、市役所の業務フロアーや図書館、子育て関係施設を中心にした駅前ビルが、どのようにして中心市街地の活性化に寄与するのか、駅前の賑わいを回復する効果をもたらすのかが全く不明です。それらの施設が駅前に不可欠なものでなく、再開発ビルの余剰フロアーを埋めるために、すなわち再開発事業を成立させるために計画されたとすれば、本末転倒ではないでしょうか? 市が当初から掲げている駅前再開発と明石港周辺整備の2大拠点の整備による「相乗効果」は、その後のフェリー航路の廃止と砂利揚げ場の移転凍結によって暗礁に乗り上げており、計画の抜本見直しを迫られる事態になっています。

疑問点の3つ目は、超高層マンションと巨大な商業・業務ビルが駅前につくられることによる中心市街地の分断と、明石駅前にふさわしいまちづくりに将来取り組んでいく際の大きな障害になることです。

まちの南北を断ち切るような大きなビルは、まち並みを分断します。明石駅前の明石らしいまちづくりはこれからゆっくりと知恵を集めて計画づくりにかからねばならないときに、「再開発ありき」で中心市街地全体の将来のまちづくりと切り離して進めるのは、駅前という立地条件だけに問題が少なくありません。

「明石らしいまちづくり」は、多様な視点から明石駅前にふさわしいまちづくりを構想していくべきなのです。中心市街地活性化基本計画にしても、駅前再開発計画にしても、商工関係者を中心にした協議会で短期間に慌ただしく議論しただけで、明石駅前中心市街地をどうするかという多様な観点から議論されたとはとても言えません。

明石駅前一帯は、旧城下町のまち割を残す貴重な街並みが国道以南に残っています。明石海峡に面した明石駅前一帯は、何よりも明石海峡と淡路島の緑の「海峡景観」、駅に隣接して広がる明石公園の緑と白亜のお城、天文科学館にいたる上ノ丸台地の「緑の壁」を背景に、優れた環境に恵まれています。

超高層マンションやアスピア明石に次ぐ巨大なビルを駅前に建てることは、こうした先代から受け継がれてきた明石駅前の貴重な財産を壊すことにしかなりません。近い将来、すばらしい明石駅前らしい風景と街並み景観を取り戻すためにも、短兵急に駅前をコンクリートジャングルにする愚は避けるべきではないでしょうか?

疑問点の4つ目は、アスピア明石の失敗の原因をつぶさに検証し、その二の舞を避けることです。明石市で最初の再開発事業であり、完成後10余年を経てその失敗が明らかになっているのに、なぜ、十二分な検証をせずに新たな、同じような再開発計画を進めようとするのでしょうか? 市民の多くが抱く疑問です。

アスピア明石の具体的な問題点はここでは省略しますが、巨額の累積赤字と含み損を抱えた経営状況が、「再開発ビル運営の専門会社」に運営を“丸投げ”して、経営状況が改善するとは思えません。再開発ビル運営の専門会社に任せればうまく行くなら、全国の再開発ビルが危機に瀕しているはずがありません。経営や店舗運営のお役所的仕事に原因があったことも事実でしょうが、再開発ビルの経営不振の本質は構造的な面にあり、その原因を検証することなく新しい再開発ビルをつくると、アスピアの二の舞になるのは火を見るよりも明らかです。

以上、大きく4点にわたって駅前再開発計画の問題や疑問点を述べましたが、これは再開発の是非をここで問題にしようというのではありません。こうした大きな問題や疑問点があるにもかかわらず、計画を進める市をチェックする立場にある市議会が、市民でも気づいている問題点や疑問点を明らかにせず、市の説明をほとんど鵜呑みにしたまま、多数派議員によってそのまま推進しようとしていることが、今回の住民投票の実施を求める大きな理由になっているからです。

今回の再開発計画については、不思議なことに市長も担当職員も、議員のみなさんも、この事業を行えばこれだけの成果が期待できるということを具体的に、胸を張って説明していただいたことはこの1年半、一度もありませんでした。巨額の税金を投入する公共事業を進めるのに、その「大義」やビジョンを胸張って語れないのは、何故なのでしょうか? みなさんの口から出てくるのは「もう決まったことだから」の一点張りです。胸を張って語れない、何か後ろめたいことでもあるのか―と疑いたくなるのです。

本市議会は、昨年4月に改選以降も、泉市長の施策について活発な議論と追及を行い、広報予算や中学校給食、弁護士採用等で予算を修正するなどの積極的な活動を展開されています。それなのに、こと再開発の問題になると舌鋒が少なく、問題点の追及や解明が甘いのは何故でしょうか?

今回の住民投票実施の直接請求は、このような市民の隔靴掻痒の思い、いまの明石市政でもっとも大きな事業である再開発問題をチェックしない、チェックできない議会の現状に大きな不安を抱いてきたからであります。

さらには、市長懇談会等でしばしば見せられてきた、再開発事業についての「市長と議会の責任の押し付け合い」としか思えないやり取りも、市民の不安を倍加させています。巨額の税金を投じる再開発事業が失敗すれば、そのツケは市民にのしかかってきます。大蔵海岸の失敗も、アスピア明石の失敗も、市長や議員が責任を取るわけではありません。私たち市民は20年間で三たび、巨大公共事業の失敗を見過ごすわけにはいかない―と、決意したのが住民投票の実施です。

市長も議会も責任を取らないなら、失敗を未然に防ぐために市民の責任で事業の可否を明らかにしようという趣旨です。「大事なことはみんなで決めよう」と、自治基本条例の趣旨にのっとって、民意を市政に反映するための住民投票の実施です。

◇住民投票を行う意義

さて、いま住民投票を行う意義を、皆さんはどのように考えられていますか?

ご承知のように、明石市は一昨年4月、自治基本条例を施行しました。2007年から丸3年かけて検討委員会で審議してきた「明石市の憲法」です。議会も2008年、検討委員会の要請を受けて、「明石市議会のあるべき姿」「明石市議会議員のあるべき姿」という宣言を議会の総意としてまとめられ、自治基本条例の8条と9条にほぼそっくり盛り込まれました。

この条例の第14条には「市政への市民参画の仕組み」として、住民投票制度が明記されています。14条の第1項には、こう書かれています。

「将来にわたって明石市に重大な影響を及ぼすと考えられる事項について、住民が市長に対して住民投票の実施を請求したときは、市長は住民投票を実施しなければならない」

そして第2項には「市長等及び市議会は、住民投票の結果を尊重しなければならない」と規定されています。

私たちは、「市民の参画と協働」そして「情報の共有」を「市政運営の原則」にすることを掲げた輝かしい、この自治基本条例に基づき、その第1号として駅前再開発計画について住民投票を実施するよう請求したかったのです。昨年春の市長選挙で、力強く「住民投票の実施」を掲げた泉市長のもとで、大規模公共事業について明石市で初めての住民投票を自治基本条例に基づいて請求したかったのです。

しかし、施行から3年経っても14条3項に規定した住民投票の手続きを定める、いわゆる常設型住民投票条例が制定されませんでした。泉市政が始まって間もなく2年を終えるのに、住民投票条例を制定する作業が始まっていないのは極めて残念なことです。

したがって、今回は国の法律、地方自治法74条に基づく直接請求の手続きによって住民投票の実施を請求することになったのです。地方分権時代に入って12年。地元の基礎自治体に住民投票の実施を定めた立派な自治基本条例があるのに、これを使えず国の法律によらねばならなかったことは、本当に残念でした。

これを契機に、速やかに常設型住民投票条例を制定していただきますよう、強く要望いたします。

◇住民投票への反対理由

住民投票の実施について議会内に反対する意見があることについて、一言申し上げておきます。

私たちは署名収集が終わり、法定必要数の4倍を超える署名を手にした段階で、30名の議員の皆さん全員に公開質問書を提出し、個別に面談して回答をいただいてきました。2時間近くも私たちのメンバーとの意見交換に応じていただいた議員もおられました。お忙しい中、面談に応じていただいた方々には厚く御礼申し上げます。また、半数余りの議員の方々は、会派として面談には応じないと拒否されました。開かれた議会、市民参加を志向されている議会として、極めて遺憾であります。

これらの過程で、何人かの議員の方々から「選挙で選ばれた議員が市政をチェックして結論を出している。議会制民主主義でやっているのだから、住民投票の必要はない」という趣旨のお話を伺いました。しかし、これは全くの誤解であることを、あえて申し上げておきます。

私は、幾つかの大学で地方自治を教えています。この国の地方自治の本旨は、団体自治と住民自治にあることは先刻、ご承知のことと思います。主権者である住民の意思が、確実に市政に反映される「住民自治」が保障されて初めて、国や県に対して対等・協力の関係で独立性を担保される「団体自治」を実体化できます。このため、地方自治は議会を通じた間接民主主義とともに、これが機能しない場合には住民が直接市政に参画する直接民主主義の制度が補完的に保障されていることもご承知の通りです。住民投票は直接請求の中でも、選挙と並んで最も重要な制度であり、だから近年活発に活用されていることは、ぜひともご理解いただきたいと思います。

また、議員の方々の中には、「住民投票をすれば反対が多数を占めて再開発がつぶれる」という見通しから、住民投票に反対されている方も少なくないようです。しかし、この考えは本末転倒であり、「民意の反映に反対する」のと同じであります。住民投票の結果、再開発賛成が多数を占めれば、その民意にもとづいて事業を進めればいいし、反対が多数を占めれば自治基本条例に規定されているように、その民意を尊重すればいいだけです。民意を反映させないために、住民投票に反対することが何を意味することになるか、賢明な議員の皆さんにはおわかりのことかと思います。

◇市長意見と議会のあり方について

直接請求した条例案についての市長意見と議会のあり方についても、一言申し上げておきます。

泉市長が、再開発計画と住民投票は別個のものであるとして、再開発は推進するが、住民投票は自治基本条例の趣旨にかなうから賛成する―という判断をされたのは、極めて真っ当な判断であると高く評価します。すでに述べたように、今回問われているのは再開発の是非ではなく、住民投票の是非です。住民投票の段になって市長が再開発計画への賛同を求めていかれるのは別の問題であります。ここでは、自治基本条例第14条の規定は「市長に対する極めて重要な法規範である」とした市長の意見書に注目していただきたいと思います。

14条は、市長だけを縛っているのではありません。市長と同様に、議会もまた、遵守しなければならない規範であることをご理解いただきたいと思います。今回は、14条に基づく手続き条例ができていないので、地方自治法に基づき2万196という、法定必要数の4.2倍を超える有効署名をもって請求しました。住民が一定の手続きに沿って請求すれば、自動的に住民投票を実施するという条例を議会の圧倒的多数が賛成して成立させたという経緯を考えれば、議会も市長同様の判断をせざるを得ないものと考えます。

自治基本条例は、選挙で市民から市政運営を負託された市長と議会を縛るものであります。

最後に、本件審議に当たって、2件だけ注文をさせていただきます。

一つは、この条例案の審議を付託する委員会です。13日の議会運営委員会では、本件は「住民投票の是非を審議する議案であり、本来は総務常任委員会の所管であるが、投票のテーマが再開発なので建設企業常任委員会も関係する。再開発計画の中には図書館や生活文化に関わる施設もあるので、すべての常任委員会に関わる」という理由から、特別委員会の設置を求める意見も相次ぎました。しかし、再開発だから建設企業でいいという意見が多数を占め、突っ込んだ議論もなく建設企業常任委員会に決まりました。

しかし、建設企業常任委員会は現在、再開発賛成の議員だけで構成され、9月議会で反対または慎重な対応を唱えた議員は一人も居ません。このような委員会に付託して、立ち入った審議をしていただけるのかどうか、極めて不安であります。

委員会の運営の中でぜひ、員外委員である傍聴議員の皆さんも議論に参加して、実のある審議をしていただきたいとお願い申し上げます。

また、本日の陳述は陳述だけで、この後の質疑では陳述者は答弁が許されていません。多々申し上げましたので、きっとたくさんの反論等のご質問もあろうかと思いますので、できれば委員会審議の場で参考人として質疑に参画させていただけるよう、ご配慮いただきますようお願い申し上げます。

長時間の陳述、お聴きいただきありがとうございました。

(おわり)