議会の役割どこへ? コロナ対応で霞む議会のチェック機能

──新型コロナ感染症と、どう付き合っていくか──
松本誠のメールマガジン

「新型コロナ」市民ジャーナル(6)2020.6.12

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 空前の巨額補正予算が相次いで審議されている国会は、実質的に衆院1日、参院1日のあっけない審議日程で12日にも31兆円を超える第二次補正予算を可決成立させる。これから第2波、第3波の感染拡大が懸念される中で、野党は17日までの会期を大幅に延長することを求め、コロナ対応の議論を継続することを要求しているが、政府・与党は数の力で押し切り、使途も分からないまま巨額の予備費を手に国会のチェックを逃れようとする。
 4月30日に成立した第一次補正予算25.7兆円も、わずか4日間のスピード審議だった。国会提出直前に閣議決定した予算案を大幅修正し10万円給付を盛り込んだ経緯もあって、野党は当初から「賛成ありき」で早期成立が与野党の“合意”でもあった。しかし、その後に事業者への持続給付金も個人への10万円給付も遅れに遅れ、しかもその背後にずさん極まりない予算執行体制のからくりが明らかになったり、「GO TOキャンペーン」にも“黒い霧”さえ浮かんできた。
 第二次補正予算はこれらに加えて「10兆円の予備費」をめぐって論戦の多くが費やされたが、十分な解明や歯止めもないままに成立しようとしている。

議会機能の空洞化は「コロナ世論への遠慮」という錯誤、議会の“自殺行為”に

 前号でも触れたが、永田町や霞が関にはいま「コロナ予算に異を唱えると世論の袋叩きになる」というタブーが充満しているという。コロナ関連なら何でも通るというフィーバーが与党政治家に充満しているほか、予算に時間をかけて追及すると早期執行の足を引っ張っているとみられるという懸念が野党議員にも生まれているとしか見えない。
 市民も巨額のコロナ予算が組まれる中で、給付の迅速化を求める世論が審議加速を促す圧力を生み出して、審議もそこそこに成立を図る動きになっている。
 しかし、給付の迅速化⇒予算審議の加速⇒早期成立という図式には、大きな落とし穴があるように感じる。もともと補正予算の編成には2ヵ月ぐらい必要だと言われるのを、突貫工事で慌ただしく編成し、しかも霞が関の官僚もかつて経験したことのないけた外れの補正予算だ。当然、荒っぽい編成になり、その空隙を突くようにさまざまな政治的思惑や利権が入り込む。それでなくても今の政権は、利権構造とそれに“忖度”する官僚構造が相まって、モリ・カケ、IR、桜など数々の疑惑を生み出してきた。
 そんな政権構造の中で、巨額のコロナ予算も当然“疑惑山盛り”になることは予想されており、予算審議段階でも十二分な審議が必要になる。何重構造にもなる「再委託システム」の中では、給付予算が巨額だけに“中抜き額”も巨額になる。「GO TOキャンペーン」予算1兆6794億円の2割近い3095憶円が委託費として首相の“お友達企業”でもある電通に流れる仕組みは、黒い霧の臭いがプンプン漂ってくる。
 こうした問題点を先送りして、予算成立を急ぐことについて世論は決して是認しないだろう。「コロナ禍で苦しむ人たち」を早期救済することと、巨額の税金の無駄遣いをチェックすることとは相矛盾しない。なぜなら、巨額の税金の無駄遣いのツケは将来、国民自身に跳ね返ってくるからだ。予算のチェックを甘く通すと、その責は野党不信にもなって返ってくる。「754名もの国会議員は何をしているのか!」という厳しい目は、国会議員や政府官僚にも満額支給されるボーナスの季節だけに、暮らしにあえぐ市民の目は一層厳しくなる。

より深刻な自治体議会、「3密」対策で議会のチェック機能“自粛”に拡大解釈?

 国会ほどメディアが報道しない中で、都道府県、市町村の自治体議会の「コロナ自粛」が広がっている。自治体も国の補正予算に対応してコロナ関連補正予算を次々に提案し、4、5月も議会を開くところも多く、いま6月定例議会が一斉に始まっている。
 しかし、ここで目立つのは、通常行われている審議の「短縮」「省略」「簡素化」だ。議会審議の簡素化は、当初予算を審議する3月議会から始まった。議会日程の短縮、一般質問の中止や取り下げ(質問者がゼロになった議会も)、通常の質問時間の短縮や制限、文書質問への切り替えや質問事項の事前調整など、議員として最も大事な本会議や委員会での質問や提言(発言)を“自粛”の名のもとに制約する動きが広がった。小生の地元明石市議会は4月、5月と臨時議会を開き対応したが、8日に始まった6月議会では、通常は一人1時間の持ち時間がある本会議の一般質問(一問一答)を答弁を含めて45分以内とする申し合わせが議会運営委員会で行われた。きちんと質問する議員にとっては、厳しい制限だ。
 また、傍聴者を人数制限したり、法律では本会議の傍聴を禁止できないために「傍聴自粛要請」を出す議会も全国では少なくない。
 4月以降の補正予算審議になると、中には議案審議自体を省略して首長の「専決処分」を認める議会が相次いだ。首長の専決処分は地方自治法の規定で「災害時などで議会招集の余裕がない場合に、首長が議会の議決なく決めることができる“例外”的な仕組み。乱発すると議会の議決権を侵すことになり、鹿児島県の阿久根市で10年前に、市長が議会と対立する中で乱発し問題になった。コロナ禍では、第一次補正予算編成時に安倍首相が「現金給付は5月中にも給付を開始できるよう準備を進めている」と発言しその後も「5月支給」を繰り返す中で、政府が「専決処分を期待している」ことを表明したことから、都議会はじめ全国各地でコロナ関連予算の専決処分が相次いだ。ただ、多くの議会は臨時議会を開いて審議している。

災害時に議会は“自粛”している場合か! 市民が多難な時こそ動くのが議員!

 コロナ禍では感染症対策として「3密」を避ける新しい生活方式が提案されたり、人と人の接触を可能な限り避ける「ステイホーム」が呼びかけられた。多くの自治体議会も率先して実行するべく、議会での会議で3密を避ける工夫をしたり、会議の回数や時間を減らすことに取り組んだ。
 もちろん、平常は密閉された本会議場や委員会室を空気が通るように窓やドアを開けるとか、可能な限り席を離すよう配置を工夫したり、広い会場に変更するなどの工夫は必要だろう。出入りする議員や職員、市民にも手洗いや消毒、マスク着用を求めることも議会活動とは矛盾しない。
 しかし、上記のような議会活動の制約が果たして必要なのかどうか? 議員の職場でもある議会は、本会議場や委員会室、議員控室などの環境は、職員の職場環境に比べれば空間的にも設備的にも格段に恵まれている。コロナ禍でも通常の仕事を省略できない医療・保健や教育、福祉、交通やライフライン、生活流通などでは、過酷な職場環境の中で感染の危険に脅えながら業務の手を抜けない職場は山のようにある。議員は登庁する際も多くはマイカー移動で公共交通機関の利用リスクも少なく、議会には専用の駐車場も確保されている。
 感染に留意することは全ての人に共通するマナーだが、議員や議会は災害や感染症蔓延という非常時のときほど、その職責を果たすためにしゃにむに働く責務を負う公務だ。今回のコロナ禍は、自治体行政のあらゆる部門に長期にわたって大きな影響をもたらしている。医療崩壊の危機をはじめ、保健や福祉の現場もここ20~30年の間に進んだ合理化や人減らし、正規職員から非正規職員への切り替えなどから、これまで潜在していた社会と行政の歪みが、コロナ禍によって一気に噴き出したものだ。
 感染症の第2波、第3波に備えるためにも、コロナ後の社会の在り方を考え準備するためにも、地域の隅々で起こっている「歪み」を自分の目で確かめ、市民・住民の声に耳を傾け、首長や職員に伝えて議会と行政が一体となって課題解決に取り組む、またとない機会である。議員や職員はとても「ステイホーム」している余裕はないはずだ。わずかばかりの議員報酬のカットでお茶を濁すよりも、今こそ議会のチェック機能を果たし、市民・住民の窮状を伝える責務を果たすことで、議会への信頼が高まる。

日ごろの目配り、市民や職員との対話不足が招く“裸の王様”にならないために

 テレビ会議やインターネットを使ったズーム会議などを活用した「リモート会議」を活用し、リアルな会議を減らす動きが全国的にある。将来のより深刻な事態に備えてリモート会議を準備しておくことは必要だが、こうした方式は実際にはそれを手助けするために事務局の職員に大きな負担としわ寄せが及んでいる。
 政府が閣議の回数を減らし、リモート閣議を吹聴したことがある。しかし、大臣が首相官邸に登庁し閣議室に出向かない代わりに、各省庁でどれだけの職員がそのサポートにかかわり、会議がすめば官邸の職員が各省庁を駆け回り議決文書に「花押」(印鑑)をもらいに回る“壮大なムダとしわ寄せ”を生じている。
 コロナ感染症を口実に議員が手抜きすれば、その分を職員が被ることぐらい気がつくべきである。コロナ禍は同時に、議員の資質と議会機能の不全状態をあぶり出している。

まこと流まちづくりの地平 ◇ 松本誠
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